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フランスのクレヨン

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思えば、私の「海外放浪」への憧れは、ここから始まったのだと思う。
はるか昔、5歳かそこらだった頃、父の従妹からもらった、「フランスのクレヨン」。
彼女は、香川県の小さな村から上京し、独学で英語を学び、
当時まだ珍しかった海外添乗員の仕事をしていた。
祖母の家に泊まっていた私に、その日訪ねて来た彼女は、
「フランスのお土産よ」と言って、このクレヨンをくれた。

「フランスのクレヨン」
それを手にしたときの衝撃は忘れられない。
「外国」なんて、月よりも遠かった。
そこに行く人がいるなんて、信じられなかった。
目の前の、不思議な文字の書かれたカラフルな箱が、
「外国」からきたものであるなんて。

ちょっと使ってみたけど、でももったいなくて、すぐにしまいこんだ。
そして時々取り出して、匂いをかいだり、箱をなでてみたりして、
夢のように遠い「外国」を、「フランス」を、想った。

昨年の夏。
バンクーバーに住む彼女を訪ねた。
あの時以来、私たちは顔を合わせていなかったのだ。
世界中をバックパックで旅した後、カナダに移住。
仕事を持ち、子供を育て、自分で大きな家を買い、
山に登り、旅行をし、たくましく楽しく暮らす、
かっこいいシングルマザーだった。

そしてこのあいだ。
押入れを片付けていたら、
なんと、あの「フランスのクレヨン」が出てきた。
あれから10回以上の引越しのたびに、
無意識に持ち歩いていたらしい。

私も20代以降、なんどか海外へ飛び出して、
働いたり勉強したり放浪したりした。
そのときに、いつも心の片隅にあったのは、
このクレヨンをもらったときの衝撃と、まだ見ぬ遠い国への
強烈な憧れの気持ちだった。
私を外へ、外へと向けていた原動力のひとつになっていたのは
意識してはいなかったけれど、このクレヨンだった。

写真をとって、バンクーバーの彼女にメールで送った。
「これが、私の、海の向こうの文化への憧れの
原点です。」と書き添えて。

これからも、ずっと大切にしよう。
私の好奇心と冒険心のシンボル、「フランスのクレヨン」。
by mitlan | 2006-02-05 00:56

あちこち旅をしながら、働き、考え、遊ぶ日々を綴ります。料理教室(鎌倉 Whole Foods Studio、熊本 Native Foods)、講演のお知らせもこちらに載せています。

by tomoko
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