フランスのクレヨン

c0067272_029357.jpg


思えば、私の「海外放浪」への憧れは、ここから始まったのだと思う。
はるか昔、5歳かそこらだった頃、父の従妹からもらった、「フランスのクレヨン」。
彼女は、香川県の小さな村から上京し、独学で英語を学び、
当時まだ珍しかった海外添乗員の仕事をしていた。
祖母の家に泊まっていた私に、その日訪ねて来た彼女は、
「フランスのお土産よ」と言って、このクレヨンをくれた。

「フランスのクレヨン」
それを手にしたときの衝撃は忘れられない。
「外国」なんて、月よりも遠かった。
そこに行く人がいるなんて、信じられなかった。
目の前の、不思議な文字の書かれたカラフルな箱が、
「外国」からきたものであるなんて。

ちょっと使ってみたけど、でももったいなくて、すぐにしまいこんだ。
そして時々取り出して、匂いをかいだり、箱をなでてみたりして、
夢のように遠い「外国」を、「フランス」を、想った。

昨年の夏。
バンクーバーに住む彼女を訪ねた。
あの時以来、私たちは顔を合わせていなかったのだ。
世界中をバックパックで旅した後、カナダに移住。
仕事を持ち、子供を育て、自分で大きな家を買い、
山に登り、旅行をし、たくましく楽しく暮らす、
かっこいいシングルマザーだった。

そしてこのあいだ。
押入れを片付けていたら、
なんと、あの「フランスのクレヨン」が出てきた。
あれから10回以上の引越しのたびに、
無意識に持ち歩いていたらしい。

私も20代以降、なんどか海外へ飛び出して、
働いたり勉強したり放浪したりした。
そのときに、いつも心の片隅にあったのは、
このクレヨンをもらったときの衝撃と、まだ見ぬ遠い国への
強烈な憧れの気持ちだった。
私を外へ、外へと向けていた原動力のひとつになっていたのは
意識してはいなかったけれど、このクレヨンだった。

写真をとって、バンクーバーの彼女にメールで送った。
「これが、私の、海の向こうの文化への憧れの
原点です。」と書き添えて。

これからも、ずっと大切にしよう。
私の好奇心と冒険心のシンボル、「フランスのクレヨン」。
by mitlan | 2006-02-05 00:56 | daily life

あちこち旅をしながら、働き、考え、遊ぶ日々を綴ります。料理教室(鎌倉 Whole Foods Studio、熊本 Native Foods)、講演のお知らせもこちらに載せています。
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30